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新しいタオルはやっぱり快適

 先日、新しくバスタオルをおろしました。古い方も、特に不満もなくお風呂上りに身体を拭くのに使っていましたが、新しいタオルに触ってみると、やはり使い古したものに比べると使い心地が良いものですね。

うちのタオルのいくつかは今治タオル

 そんな我が家のタオル事情ですが、貰い物などの普通のタオルと、いわゆる「今治タオル」を使っています。正直なところ、そんなに意識していなかったのですが、何年か前に今治タオルが話題になった折に買ってみたところ、何となく他よりも手触りや吸水性が良いように感じ、それから自発的にタオルを入手する時は、今治タオルを選ぶようにしていました。

タオルについて改めて調べてみたよ

 何もなければ、そのまま漠然とタオルを使い続けたかもしれませんが、後述の不当労働に関する報道もあり、ちょっと見直してみたいと思うようになりました。ちょうどいい機会なので、そもそもタオルとはいつ頃からあるものなのか、今治の他に有名な生産地などはないのか、などについても、まとめて調べてみたくなりました。その結果を、ここでは集積してみたいと思います。

 以下、かなり長いので目次を設置しておきます。


タオルの歴史をひも解くと

 いつも特に何も考えず使っているタオルですが、いつ頃どこで発明されたものなのでしょうか。まずはその辺りから探ってみましょう。

起源はヨーロッパ

 タオルの起源について、どうやら確実なことは分かっていないようですが、近代的なタオルの原理がフランスで発明されたのは、1811年のことだということです*1。
 しかし、工芸品レベルとしては、それ以前からアラブ世界に存在していたという説があったり、古代ローマでバスタオル的なものが使われていたという話があったり、さらにさかのぼって、紀元前2000年ころと推定されるエジプトの墳墓からも、タオルに近いものが発見されたりしているといいます。特に古代ローマには、お風呂の文化があったようですし、バスタオルが使われていても驚きません。
 結局のところ確たる起源は不明ですが、ともかく相当古い時代に、ヨーロッパのどこかで作られ始めた、と言うことができるでしょう。
 ちなみにタオルという言葉の語源は、フランス語の「ティレール(Tirer)」やスペイン語の「トアーリャ(Toalla)」あたりから変形したものと言われているそうです*2。近代タオルの原理が発明されたのはフランスですし、フランス語由来なのかもしれません。
 フランス語としての「Tirer」の意味としては「引き出す」とか「発射する」というものだそうです。タオルのパイル地(糸を輪状に布地の上に出した布地)を作り出す挙動から命名されたのかもしれません(この辺りは完全に憶測です)。

日本に到来したのは明治初期

 産業革命や綿花プランテーションという趨勢もあって、近代以後、欧州でのタオル生産が急伸したのは想像に難くありません。そんなタオルが、日本にもたらされたのは明治5(1872)年のことのようです*1。輸入元はイギリスだったようですね。その後、国内でもタオルの生産が始まって、タオル産地が確立されていった、という流れです。
 近代的なタオルの発明から、それほど時間がかからずに(といっても60年あまり経っていますが)日本伝来が果たされたというのは、やはり貿易が盛んになった明治期だったからこそでしょう。江戸幕府の鎖国政策が無ければ、もっと早かったのかもしれません。日本には手拭いという独自アイテムが既に存在しましたが、タオルのふわふわした手触りは、きっと新奇なものとして受け入れられのでしょう。

タオルのサイズ(長さ・大きさ)や種類*3*4

 次は、タオルのサイズについておさらいしてみます。自分としては、普段フェイスタオルとバスタオルくらいしか使いませんが、微妙にサイズの違う種類を含めると、ずいぶんバリエーションが豊富なようですね。

ハンカチ大のハンドタオルやミニタオル

 もっとも小さいのが、ミニタオルやハンドタオルでしょう。おおむね15~40cm四方という正方形をしたタオルです。ハンカチの代わりとしても使えます。
 男性限定(自分限定?)かもしれませんが、大きめのものならギリギリで入浴にも使えますので、遠出をする際などに持っておくと、そのつもりがなくても立ち寄り温泉などに入りやすくなります。

手ぬぐい大のフェイスタオル・少し大きいスポーツタオル

 恐らく最もポピュラーなサイズのタオルが、フェイスタオルでしょう。寸法としては30~36×80~90cmくらいで、これは手拭いとだいたい同じサイズ感です。用途としても、入浴用や洗面台の近くに掛けて顔や手を拭くのがメインですね。
 フェイスタオルと、下のバスタオルの中間的なサイズのタオルが、30~40×80~110cmくらいの寸法のスポーツタオルです。正直、自分はバスタオルと同じように使っていますが、いちおう想定されているのはスポーツ時の汗をぬぐったり、観戦時に日よけとして羽織ったりという使い方だそうです。もちろん、その辺りは好きに使って構わないと思います。

一般的な最大サイズのバスタオル

 一般的に使われる中で最も大きいサイズのタオルが、お風呂上りに身体を拭くバスタオルです。プールなどの後にも使いますね。サイズは50~75×100~130cmくらいとのこと。最近は日本人の体格が良くなっていることもあり、バスタオルの大きさも拡大傾向だそうです。

マラソンタオルなる特殊なタオルも

 上に挙げた以外にも、細長くスポーツなどの応援グッズとして用いられるマフラータオルや、こちらもスポーツなどで休憩時にベンチに敷くベンチタオル(バスタオルよりも全然おおきいようです)などもありますが、用途としては特殊なものと言えるでしょう。
 そして、さらに特殊なタオルとして、マラソンタオルなるものがあることが分かりました。このマラソンタオルは、子どものマラソン大会などに際して親御さんが手づくりするもので、バスタオルなどを加工してベスト状にしたものを、体操着の下に着て走り、走り終えたら汗を吸ったタオルだけを脱いでしまうというものです。汗をかいたままだと風邪をひいたりしそうですし、なかなか有効なタオルのバリエーションと言えそうです。
 このマラソンタオルは、なぜか奈良県でしか使われていないようですが、マラソン大会以外にも色々と利用できそうです。下記のように商品化されたり、ハンドメイド品が「メルカリ」等でひそかに(というほど秘密裏というわけでもないですが^^;)売買されているようですので、奈良県以外の方でも入手することはできそうです。


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国内のタオル産地を探す

 気になっていた日本国内のタオル産地についても、確認してみたいところです。ずばり、現在の日本国内で有名なタオルの産地は、3か所あります。冒頭でも言及した愛媛県今治市の今治タオルと、大阪泉佐野市の泉州タオル、そして三重県津市のおぼろタオルです。
 しかし、これらのタオル産地とは、何によって産地とされているのでしょうか。
 例えば農作物なら土壌や気候によって産地が決まると思うのですが、工業製品であるタオルの場合、どういった要因によるのか、にわかには分かりません。単純に“伝統的にタオル作りが盛んだから”という理由もあるとは思いますが、それ以外にも要素があるのではないかと思います。それは、やっぱり材料なのでしょうか。それとも、加工に適した環境があるということなのでしょうか。

綿の産地とはあまり関連なさそう

 タオルの材料は主に綿のようですが、日本国内で綿を生産しているところはごく少数で、工業品として作られていることはほぼ皆無のようです*5*6。つまり、国内生産とはいえ、大多数のタオルは海外から輸入された綿で作られていることになります。
 ということは、素材である綿は、産地とはあまり関係がない、ということになるでしょう。

タオル産地の条件の一つは“良質な水”みたい

 では、タオル産地はその土地の資源的な要素とは全く無関係なのでしょうか。今治タオルのブランドサイト*7を見ていたところ、そうとも限らないと言える要素を発見しました。それは、タオル作りの「晒し」(不純物や糊を取り除き漂白すること)や「染色」といった工程で使われる“水”です。
 上記のブランドサイトによれば、今治には「高縄山系を源流とする蒼社川の伏流水や霊峰石鎚山より流れ出た地下水など、極めて重金属が少なく硬度成分も低い、晒しや染めに適した良質の水」が豊富とのこと。泉州タオルの産地である泉佐野市もまた、水なすなどの野菜やお酒も作られていることから、やはり昔から水が良いところなのでしょう。大阪タオル工業組合の泉州タオルの説明*8には「和泉山脈の豊富な地下水」がタオル作りに貢献している旨が書かれています。地名の由来的にも、頷ける気がします。
 津についても、三重の豊かな地下水を井戸から汲み上げ、タオル作りに活かしているとの記述が、公式オンラインストアの記事にあります*9。もともと木綿の産地だったこともあって、現在もタオル産地なのでしょう(ちなみに国内で木綿の生産がどこから始まったかについては、実は今のところ確かな史料が無いようです)。
 以上から、良い水を大量に使えるというのは、タオル生産において無視できない要素であることは確かでしょう。そういえば、津・泉州・今治を地図上に示すと、おおむね一直線に並ぶのが少し不思議な気もします。タオル作りに適した地下水脈でもあるのでしょうか。。

今治タオル:有名だけど不当労働が気になる

 タオル産地の条件などについて考えてきました。以降は具体的な3つのタオル産地について、特色などをまとめてみたいと思います。一番手はやはり、もっとも知名度があると思われる今治タオルからいってみましょう。

改めて、今治タオルとは

 もはや多くの人の知るところかもしれませんが、今治タオルとはどんなタオルなのか、改めて確認してみます。
 今治タオルは、その名の通り愛媛県今治市で生産されているブランドタオルです。先述の通り、タオルづくりに適した軟水だという「蒼社川の伏流水」と熟達した技術によって、安心で柔らかいタオルを量産している、とされます。
 ただし、今治市で作られているからといって、すべてが今治タオルと呼ばれるわけではないようです。

今治タオルと今治産タオルの違い

 では、ブランドとしての今治タオルと、単純に今治産のタオルとでは何が違うのでしょうか。ずばり言ってしまうと、今治タオルとして認定されるための品質基準*10が設けられており、それをクリアしたタオルだけが今治タオルを名乗ることができるということのようです。
 今治タオルを謳うための品質基準には「タオル特性」「染色堅牢度」「物性」「有機物質」という4つの区分があり、個別の項目を併せると合計12項目となります。大まかに言って、吸水性や脱毛率、洗濯や汗への耐久力、丈夫さなどがテストされるみたいですね。

技能実習生の不当労働報道を受けて

 実際に使って分かっていることですが、今治タオルの吸水性や柔らかさは確かに素敵です。それが気に入って使っていたところ、今年6月にNHKのドキュメンタリー番組「ノーナレ」にて、今治地域の縫製工場で働いているベトナム人技能実習生たちの、過酷な労働環境について人々が知るところとなりました。今治タオル工業組合は、ほぼ即座に報道されたのは「組合員ではないが、組合員等の下請け企業」であるものの、「組合にも社会的責任及び道義的責任がある、労働環境の改善に努める」と発表しています。
 この8月末に同組合はブランドを持続させるためとして「サステナビリティ方針」を始めとする複数の方針を発表し、ブランドを再構築する、としています*11。が、そうした発表からもまだ日は浅く、今治タオルの生産現場がいま現在どうなのかは未知です。なんだか、労働環境としては産業革命だのプランテーションだのの頃とあまり変わらない感じがして、微妙な気持ちになります。
 タオルに限ったことではありませんが、やっぱり“誰かが泣いて作ったもの”というのは、気が付く限りは使いたくないですね…。自分としてはこれといった対応策もなく、そうした現場がゼロになるよう祈るしかないのが歯がゆいですが。
 そうした点もあって、ブランドといえば今治だけ、という現在の我が家のタオル事情は見直していきたいと思います。ブランドタオルにこだわるとしても、下に書いたように他に幾つかの選択肢はあります(ただ、それらのタオルにしても労働環境がどうなのかは見えにくいのですが…)。
 ベーシックな今治タオルは以下のような品です。だいたい5枚で2000円程度という感じでしょうか。


今治タオルブランド認定 OSKシリーズ フェイスタオル 5枚セット

泉州タオル:日本製タオルの元祖

 続いて触れるのは、大阪の泉州タオルです。どうしても今治タオルが有名過ぎるために隠れがちですが、実は日本のタオル発祥の地は、このタオルの生産地である泉州(現在の大阪府泉佐野市周辺)だと言います。この地でのタオル作りが始まったのは、明治20(1887)年。上で書いたタオル伝来から15年後に始められ、以来130年の歴史があるということです。

後ざらし製法という特徴

 そんな伝統ある泉州タオルですが、その実力はどんなものなのでしょうか。特徴的な工程として紹介されているのは、「後ざらし」という製法です*12。
 製作時に付いた糊や、原料にもとから付いていた油などの不純物を洗い流す工程を「さらし」と呼ぶそうですが、例えば今治タオルでは製法上、これをタオルを織る前に行う「先ざらし」を採用しているようです*13。これに対して、泉州タオルが採用しているのが、タオルとして織り上げた後に行う「後ざらし」。タオルになったあとに洗うということで、清潔さ・使い始めから良好な吸水性・柔らかな肌触りを実現している、ということになるようです。

個人・企業用ノベルティに使えそうな「名入れ」

 泉州タオルの質については、上記の「後ざらし」以外の特徴は、見た感じあまり無いようでした。
 ただ、普通に使うという視点を離れて、贈答品や記念品などのためにオリジナルタオルを作るための「名入れ」については、公式オンラインショップを見る限り*14*15、今治タオルよりもオーダーできる加工の選択肢が多いようです。
 普通に使っていると見過ごしてしまいそうですが、個人で事業をやっていたり、会社でそういう部署におられる方にとっては一考の価値があるかもしれません。
 ただ、肝心の価格については見積もりを取ってみないと分かりませんので、その点は留意が必要でしょう。
 ちなみに、普通に買おうとすると、以下の品を例にすれば10枚で2000円程度。全体的な傾向は未確認ですが、この品に限っては今治タオルの半額くらいで入手できるようです。


白タオル 業務用 泉州フェイスタオル

おぼろタオル:独自技法による繊細な作りが興味深い

 今治、泉州という二大メジャーどころのタオルを見てきました。さらに、“三つ目のタオル”として知られているというのが三重県津市のタオルで、名称を「おぼろタオル」と言います。
 今治・泉州のように“地名+タオル”式でいくと「津タオル」になり、語呂が悪いのでそういう名前になったのかと思いましたが、それだけが理由ではなさそうです。その辺りも含めて詳細を確認してみましょう。

40番手の細糸使用が最大の特徴

 おぼろタオルの根源的な特徴ですが、ずばり言ってしまうと“使う糸の細さ”ということになろうかと思います。
 言うまでもなく、タオルというものは糸を織って作る織物の一種なのですが、通常のタオルに使われる糸は、「20番手」だということです*16。この「番手」というのは、“ある重さあたりの糸の長さ”を表す単位で、数字が大きくなるほど糸は細くなります。
 公式オンラインストアの「コラム」の記事*17を拝見しますと、おぼろタオルに用いられている糸の太さは40番手。普通のタオルの倍は細い糸を使っていることになります。
 同コラムでは、ボリューム、軽さ、吸水性、拭き心地、速乾性という、おぼろタオルの5つの特徴が列挙されていますが、そのほぼ全ては、この細い糸を使っていることによると言えるでしょう。

濡れて際立つ、おぼろ染め

 また、名前の由来となった技術「おぼろ染め」も見逃せません。おぼろタオルの創業者で画家でもあったという森田庄三郎という人が発明したらしいのですが、「乾いているときは柄がおぼろげに写り水に濡れると柄が鮮明に浮かび上がる」*18のだといいます。なんとも風情あるタオルではないですか。
 以上のような特徴と、作られてきた経緯*19を見るに、おぼろタオルはお風呂で使うのに特化したタオル、と言えそうです。
 見たところ、おぼろタオル株式會社という1社のみによる自社内一貫生産なので、他2つのタオルほど大量には出回っていないのかもしれません。けれど、その点も含めて自分にとっては興味深く感じられます。
 正直、今治タオルと泉州タオルには、それほど品質に違いが無いんじゃないかと思っているのですが(失礼)、細い糸を使っているおぼろタオルは、使い心地に明確に違いがありそうで、自分としては気になることしきりです。
 以下のタオルは、おぼろタオルのラインナップ中でも比較的スタンダードな品と思われます。5枚で3000円と、今治、泉州で挙げてきたものに比べると割高ではありますが、この辺りから試してみたいところです。


普段使うものだけに、よく知って選びたい

 挙げた3つ以外にも、知る人ぞ知るタオル産地があるみたいなのですが、とりあえず今回はここまでにしておきたいと思います。
 タオルというと、あまりにありふれているので、大して気にしない方もおられるかもしれません。けれども、じかに体に触れるものですし、使い心地の良さは、きっと日々を快く過ごすために小さからぬ役割を果してくれるのではないかと思います。
 そして、その快さには、やっぱり“そのタオルがどう作られたか”も含まれるのではないでしょうか。タオルについても、それ以外の物事についても、かかわった人たちが納得のいく環境で作られたものを評価していきたいところです。

 以上、たいへん長々しくなりましたが、タオルについて改めて考えてみました。また気付いたり考えたことがあったら、何かの形にしたいと思います。

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