zika_virus

 かなり以前から報道もされているジカ熱ですが、自分にとって何となく実像がおぼろげでした。そういったこともあるし、これから主な感染経路となるだろう蚊が増える季節に入ることもありますので、情報をまとめてみたいと思います。

●2000年代に入って流行
 ジカウイルス(Zika virus)による感染症です。1940年代に既に発見されており、人体からは1968年に初めて分離されたとのこと。2000年代に入ってからミクロネシア、フランス領ポリネシア、チリのイースター島、南アメリカなどで散発的に流行しており、2015年から始まった今回の流行では、アフリカ、中南米、インド、東南アジアなどで感染が報告されています。
 ちなみに日本で最初に感染した人が確認されたのは2014年初頭で、今回の流行については、今のところ(2016/6/21現在)感染者が出たという報告はされていないようです。また日本では、症状の重さや感染力などから感染症を分類する感染症法によって四類感染症(動物またはその死体、飲食物、衣類、寝具その他の物件を介して人に感染し、国民の健康に影響を与えるおそれのある感染症)に分類されています。

●一般的な症状は軽度(参考*1)
 以下のような症状が出るようですが、一般的に軽度とされます。
○主な症状
 発熱(38.5℃超の高熱は比較的まれ)、斑状丘疹性発疹、関節痛・関節炎、結膜充血といった症状が、全体の半数以上の症例で認められたようです。
○その他の症状
 筋肉痛・頭痛(45%)、後眼窩痛(39%)、めまい、下痢、腹痛、嘔吐、便秘、食欲不振など。ギラン・バレー症候群、神経症状を伴ったという報告もあります。
○潜伏期間と不顕性感染率
 潜伏期間は3~12日です。しかし、不顕性感染率は約80%とあります。不顕性感染とは、“感染しても定形的な臨床症状を示さず健康にみえること”を指します。といういうことは、自覚症状が無い人が感染を広げてしまうということが有り得る、ということになりますね。
*1ジカウイルス感染症とは(国際感染症研究所)

●もっとも注意すべきは妊婦への感染による小頭症(参考*2)
 上記のように、多くの症状は致命的なものではないため、脅威としてはそれほどでもありません。
 しかし、妊婦に感染した場合、その子に小頭症が生じる可能性があることが結論づけられており、注意が必要です。最近出た情報によると、妊娠初期の感染が危険であり、妊娠中期以降については小頭症の有意なリスク上昇はなさそう(*3)とのことですが、用心に越したことはないと思います。
○通常より頭が小さいことで、障害が生じる可能性がある
 小頭症の定義としては、“同年齢・性別の赤ちゃんと比べて、頭の大きさがかなり小さい”ということでしかありません。しかし、頭が小さいということは脳の成長障害に繋がり、もし脳が成長障害をきたせば、てんかん、脳性麻痺、学習障害、聴覚・視覚障害などを生じることになります。
○根本的な治療法は今のところ無し
 加えて言えば、小頭症の根本的な治療法は現在みつかっていません。 発達を補助するよう、刺激や遊びのプログラムによる医療支援が行われます。
 小頭症でも支障なく成長する例もあるようですが、上記を考えますと、可能な限り発症するリスクは避けたいところでしょう。
*2FORTH|最新ニュース|2016年|小頭症 (ジカウイルス感染症の関連を含む)
*3妊娠初期のジカウイルス感染が危険 妊娠中期以降は小頭症の有意なリスク上昇がなさそう(日経メディカル)(医療従事者専用ニュースサイトなので、リード記事しか読めません)

●感染は、蚊の媒介か性交渉など
 問題となっている感染経路ですが、現在のところ蚊による媒介が主なものと考えられています。また感染者との性交渉も、経路としてほぼ確定のようです。
○蚊による媒介
 媒介する蚊としてはヤブカ(Aedes)属のAe. aegypti(ネッタイシマカ)、 Ae. Africanus、Ae. hensilli、Ae. polynesiensis、Ae. albopictus(ヒトスジシマカ)が確認されているようです(*1)。このうち、ヒトスジシマカは日本国内でもみられる種ですので、この蚊については特に注意したいところでしょう。もちろん、ジカ熱感染者の血液を吸っていない蚊については、刺されてもジカ熱が感染することはないと思われます。
○性交渉(粘膜や血液の接触?)による感染
 性交渉によっても感染する可能性が示唆されています。従って、妊娠を希望する女性はもちろん、その相手となる男性も、ジカ熱への感染に注意しなければならないことになります。一応、感染が疑われた場合にはコンドームを装着しての性交渉が推奨されています。
 また、どういった行為までが性交渉の範疇に入るかも一考の余地があるように思えます。感染を媒介する可能性があるものとして、具体的には唾液、血液、精液などが考えれますが、蚊が吸血によって感染を媒介する以上、血液についても扱いに注意した方がよさそうです。
○オリンピックが懸念材料
 以上より、ジカ熱の感染を避けるには、蚊に刺されないようにする、よく知らない異性と性交渉(粘膜接触)をしない、ということになろうかと思います。しかし、この点については折悪しく(楽しみにされている方には恐縮です)、今年はリオデジャネイロオリンピックが催されます。
 ブラジルで感染例が出ていることと考え合わせますと、蚊が活発化する夏に人々が渡航し、そして帰国することで一気に感染が広まるのではないかと自分は心配しています。

 ●まずは蚊対策を万全に
 心配ばかりではどうしようもないので、対策を考えたいと思います。
 性交渉や輸血は自分の判断で避けられる面が大きいと思います。やはり最も注意すべきは蚊(特に媒介することが確認されているヒトスジシマカ)でしょう。蚊対策は、熱帯性マラリアや日本脳炎といった、ジカ熱以外に蚊が媒介する病気の感染抑制にもなるはずです。
 しかし、気がつけば刺されていることがある位ですし、どのように対応すればよいでしょうか。
○蚊が発生しないようにする
 まず根本的な話として、蚊が発生しなければいいわけです。小さな水溜まりがあれば、そこで蚊は成長します。家の周囲に放置されているバケツや空き缶などがあれば、水が溜まらないようにするか片付けてしまうのがよいでしょう。今年になって業者用のボウフラ駆除剤が市販されるようにもなったようです。

○居そうな所に行くのを避ける
 上記と重複しますが、よどんだ水溜りは蚊にとって快適ですので、そうした所には近づかないのがよいと思います。墓石に古い水が溜まりやすい墓地、木や竹の洞に水が溜まる林の中なども避けた方がよさそうです。行かざるを得ない時には、皮膚を露出しない服装を心がけるべきでしょう。
○蚊対策グッズをフル活用
 そうした上で、防虫・殺虫グッズを適宜投入しておくと安心できそうです。容易に手に入りそうで、あまり人体に悪影響がなさそうなものですと以下のもの辺りでしょうか。
・蚊取り線香
 基本的な防虫剤ですが、天然の除虫菊を使った無添加・無香料のものがよさそうです。

・虫よけスプレー
 比較的最近になって出てきたように思われるスプレー式の防虫剤です。やはり添加物は少な目のものがいいでしょう。

・アロマオイル
 アロマオイルとキャリアオイル(ホホバなど)、そして水を混ぜるとお手製のスプレーを作ることができます。とある研究によると、ヒトスジシマカへの忌避作用はラベンダーが最も高かったそうです(*4)。また、同じくキャリアオイルと蜜蝋と混ぜてクリームにしてもいいようです。

*4セラピー役立ち情報その4:デング熱を媒介するヒトスジシマカを撃退する香り - 機能性アロマソサエティ

・誘虫灯
 これは現状では参考程度として書いておきます。
 少し攻撃的過ぎるかもしれませんが、電気で蚊(虫)を誘導して殺虫するというものです。太陽電池を動力源としているものは設置すればしばらく手間なし、薬剤を使わないので人間への害も無さそう、と良いことづくめに思えるのですが、どうも現状では「すごく効く」わけではなさそうです。よさそうなものが見つかったら紹介し直そうと思います。


 以上、夏の流行が危ぶまれるジカ熱の概要と現状をまとめ、今後の対策について考えました。また変化があれば加筆したいと思います。

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